【医療広告規制】規制対象外だったホームページの2017年10月末時点の現状

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はじめに

今まで医療広告規制の対象外だったホームページですが、ここ数年その処遇について頻繁に議論されるようになりました。そして、2017年6月14日公布された「平成29年改正医療法」によって、ホームページも広告規制の対象に含まれました。

施行は「公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」とされており(参考)、目下、厚生労働省や関連機関で審議、検討が続けられていますので、実際のところはまだわかりません。

この記事では、改めて今回の改正医療法でどのように規制内容が変わったのか、そして2017年10月末時点ではどのような実体になりそうなのか、未来創造弁護士法人岩崎崇弁護士に解説していただきました。

岩﨑崇(いわさきたかし) / 未来創造弁護士法人 弁護士
首都大学東京都市教養学部法学系、慶應義塾大学法科大学院を経て、平成23年、1回目の受験で司法試験合格。前橋修習を経て平成24年弁護士登録。弁護士会や自治体での法律相談のほか、「国家戦略特区東京圏雇用労働相談センター」の相談員としてベンチャー企業の労務相談も担当。 年間300件の相談実績があり、相談者からは、「じっくり話を聞いてもらえる」「穏やかで親近感が持てる」と評判。 また、顧問先向け法律講座や弁護士会主催のセミナー等、講師業多数。

医療広告を規定する「医療法」「医療広告ガイドライン」

医療広告は、「医療法」と「医療広告ガイドライン」によって規定されています。

医療法は医療全般に関わる法律で、広告以外のことも書かれています。医療広告ガイドラインは、厚生労働省の立場で医療法の広告部分を解釈し、現場で具体的に法律を運用するために解説されたガイドラインです。医療法は広告を規定する基本的な考え方が記載されており、医療広告ガイドラインには広告規制の対象範囲、広告可能な事柄、広告禁止事項などが具体例と共に説明されています。

法改正前のホームページの位置付け「広告ではない」

医療広告ガイドラインには、広告の定義が記されています。その定義は以下の3つの性質を有するモノを広告とみなすとしています。

①患者の受診等を誘引する意図があること(誘因性 )
②医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)
③一般人が認知できる状態にあること(認知性)

今までは、ホームページはこの3つ目の要件 である認知性を有していないため、広告ではないとされていました。なぜならホームページは、患者さんが自発的に医院名や医師名、URLを入力しなければたどり着くことができず、能動的な姿勢が必要だからです。

認知性を要件から取り除いた平成29年医療法改正

厚生労働省「改正医療法の施行に伴う省令・ガイドラインの策定について-ご議論いただきたい論点について-」

今回の法改正では、規制対象が「広告」から「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」に広がりました。

従来の「広告」は上記3要件をすべて満たすものですが、「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」は、誘引性と特定性があれば足り、認知性は要件ではなくなりました(なお、改正法は、「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」のことを、広い意味で「広告」と呼んでいます)。

今回の改正により、「ウェブサイト」、「メルマガ」、「申し込みによる詳細なパンフレット」等も広い意味の「広告」に該当し、規制対象に含まれることになりました。

平成29年医療法改正の弊害「患者さんが情報を得られなくなる?」

では一律にホームページがTVCMや電車広告、看板などと同様な広告の扱いになるかというと、そうはなりません。なぜなら、患者さんへの情報提供ができなくなる可能性があるからです。

法改正前の時点でホームページを規制しなかった理由の一つは、テレビや看板などの受動的メディアとは異なり、能動的に情報を取りに行く性質を持つメディアであるホームページが、患者さんへの情報提供の役割として適切だったからです。

その役割を一切取り上げ、今まで規制されていたメディアと同等にしてしまうと、患者さんは何も知ることができなくなってしまいます。そうすると治療法や治療期間など医療に関する意思決定ができなくなってしまいます。

「広告可能事項」による制限と「広告禁止事項」による制限

この課題に対しての対応として、「『広告禁止事項』による制限」という広告規制の方法の変更が検討されています。

一般に、広告の規制の方法は大別すると「『広告可能事項』による制限」と「『広告禁止事項』による制限」があります。わかりづらいので詳しく説明すると、「『広告可能事項』による制限」は、「 広告してもよい事柄を指定し、それ以外の事柄の広告は認めない」とすることです。一方、「『広告禁止事項』による制限」は、「 広告してはいけない事柄を指定し、それ以外の事柄の広告は認める」とすることです。

この方式の違いにより、表現の幅が広がったり、狭まったりします。たとえば、「『広告可能事項』による制限」に則ると、「医院名、医師名、住所、診療科目が『広告可能事項』なので、それ以外は掲載できません」となります。一方で、「『広告禁止事項』による制限」に則ると、「体験談や術前術後は『広告禁止事項』なので掲載できません。しかし、それ以外は広告に掲載しても構いません」となります。

従来の医療広告の規制方法は前者です。広告ガイドラインでは、医師名やクリニック名、診療科名など、広告可能な事柄を事細かく決めています。つまり、「ここに記載されていること以外は広告してはいけない」ということです。

法改正後も引き続きこのような広告可能事項による制限をホームページに適用してしまうと、医院名や診療時間といった基本情報しか掲載できず、どこのホームページを訪れても同じ情報になってしまい、患者さんが医院や治療法を選択することを手助けできない可能性があります。そのため、医療法改正後はホームページでは、「『広告禁止事項』による制限」に変更することを審議しています。


厚生労働省「改正医療法の施行に伴う省令・ガイドラインの策定について-ご議論いただきたい論点について-」

リスティング広告やバナー広告の取り扱いも変わる可能性

ホームページに対しての規制を「『広告可能事項』による制限」から「『広告禁止事項』による制限」に変えた場合、現状「『広告可能事項』による制限」として扱われているリスティング広告やバナー広告は、その取り扱いを変えることを検討しています。

具体的には、バナーや検索結果で表示されている広告文は変わらず「『広告可能事項』による制限」、しかしそこからリンクされているページは「『広告禁止事項』による制限」になる可能性があります。


厚生労働省「改正医療法の施行に伴う省令・ガイドラインの策定について-ご議論いただきたい論点について-」

検討中の広告禁止事項

新ガイドラインを策定しているそうですが、その中に下記の広告禁止事項について言及されそうです。

基本的な考え方

現行のガイドラインの規定事項を網羅しつつ、実態に合わない規定は見直しを行う。

客観的事実が証明できない事項について

広告禁止事項とはしない(=省令には規定しない)。
ただし、治療効果に関する事項のうち、客観的事実が証明できず、患者の受診を不当にあおるものは、虚偽・誇大に該当するものであることを新ガイドラインで示す。

比較優良の考え方の明確化について

新ガイドラインにおいて改正後の法律の規定の趣旨として次の内容を示す。

① 「日本一」、「NO.1」、「最高」等の最上級を意味する表現は、患者に誤認を与える可能性が高いと考えられることから、引き続き禁止する。
②最上級を意味する表現以外の比較する内容を含む表現については、必ずしも客観的な事実の記載を妨げるものではないことを明確化する。
③ただし、②の場合は、求められれば裏付けとなる根拠を示し、客観的に実証できる必要があることとする。また、調査結果等の引用については、出典、調査の実施主体、調査の範囲、実施時期等の併記を求めることとする。

体験談、術前術後(ビフォーアフター)の写真など

体験談や術前術後(ビフォーアフター)の写真等については、誘引性があるものは原則として、広告禁止事項として省令に規定する。

おわりに

今回の平成29年医療法改正では、今まで広告として扱われてこなかったホームページが に含まれました。ただし、他のTVCMや看板と同様に広告可能事項で制限をすると、患者さんが情報を得ることができず不利益を被る可能性があります。

そのため、対策としてホームページは広告禁止事項で制限し、表現に柔軟性を設ける方向で議論が進んでいます。具体的な方針は現在新ガイドラインの策定を含めて検討中で、実体が明確になるのは2018年6月頃になるようです。

現時点で必要な対策は、現状のホームページのどの部分が課題になるかを把握しておくことです。文言の修正や写真の削除などは正式に決まってからでも遅くはないですが、早めに準備をすることをおすすめします。

参考

「医療法等の一部を改正する法律」の公布について(通知)

医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会

医療法等の一部を改正する法律の概要(医療に関する広告規制の見直し)について

改正医療法の施行に伴う省令・ガイドラインの策定について-ご議論いただきたい論点について-

ウェブサイト等について(具体的事例)

客観的事実が証明できない事項について(具体的事例)

術前術後の表示の扱いについて

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